今日は「登記識別情報」についてお話しします。仕事上では不動産売買の決済でお話しすることがほとんどですが、皆さんは「登記識別情報」についてご存知でしょうか?個人の方は当然だとしても業者や金融機関の方々でも良く分かっていない方が大半というのが私の印象です。
「登記識別情報」とは以前は「登記済み証」とか「(登記済み)権利証」(以下、まとめて「権利証」と言います。)などと呼ばれていたもので、平成17年の不動産登記法の大改正による法務局のオンライン化に伴って新しくできた書面です。どんな書面であるのかというと昔の「権利証」と同様で“登記名義人であることを示す書面(情報)”です。具体的には“所有権者”とか抵当権や根抵当権の“担保権者”などが該当します。
「登記識別情報」は登記事項証明書(旧登記簿謄本)や資格証明書などと同様のの薄い緑色の紙に、濃い緑色の目隠しシールが貼られたものになっています。シールをはがすと12桁の英数字の組み合わせが書かれています。このシールははがすと二度と貼れない仕組みになっています。
現在は法務局のオンライン化が全て完了して二度と「権利証」は発行されなくなりましたが、以前の「権利証」はまだ生きていますし、「登記識別情報」と併存している状態です。
それでは旧「権利証」と新「登記識別情報」とは何が違うのでしょうか?価値は一緒で“登記名義人であることを示す書面”ですが、ただ名称が変わったというだけではありません。それでは「登記識別情報」を作った意味がありませんから(笑)。
以前の「権利証」は登記申請書等の書面がとじ込んである冊子に“登記済み”というハンコが押された書面で、いわゆるアナログ版でした。しかも「権利証」の原本自体に価値があるものになっていました。要は、“原本がなければ登記もできない書面” になっていたものです。
他方、現在の「登記識別情報」はいわゆる「権利証」を“デジタル化”した書面になります。先ほど申し上げたように12桁の英数字の組み合わせ(以下「暗証番号」と言います。)になっています。デジタル化されたのでオンラインに対応できるようになったことは言うまでもありませんが、「権利証」とは違い原本自体には価値がないものになってしまいました。つまり“原本がなくても登記ができる書面”になりました。この“原本性の違い”が大きな違いになっています。
原本性がなくなったという点で注意しなければならないのは、コピーはもちろんですが、コピーではなくても単なる暗証番号のメモ書き程度のものでも登記として利用できるという点です。つまり、「登記識別情報」の原本が手元にあったとしても、この暗証番号が盗み見られてしまっていたら旧「権利証」が盗まれているのと同様の効果になってしまうのです。
決済の場でお客様に良くお話しすることですが、イメージ的には銀行のキャッシュカードがなくても暗証番号さえ入力すればお金が引き出せてしまうような感じです。不動産登記に照らして言えば、知らない間に所有権が移転している可能性さえあるのです。従って、この暗証番号の管理は非常に厳重にしなければならなりません。
この書面は登記で使用する印鑑証明書と並んで、一番大事な書面であると言っても過言ではありません。
どうやって管理するかは難しいですが、人目に付かない場所に大切にしまっておくとか、銀行の貸金庫に保管している人もいるようです。それと併せて、目隠しシールをはがさない状態で保管しておいて下さい。はがしたまま保管しておくと誰が見たのかも分からなくなってしまい、いつのまにか盗み見られている可能性もあるので。はがしてみたいという衝動を抑えて、使用するときがくるまではがさないまま保管することをお勧めします(笑)。以前は「目隠しシールをはがさない状態で保管しておいて下さい。」と説明していましたが、登記識別情報の目隠しシールがはがれない事故が多くなってきています(確かにきれいにはがれないで使用不能になりそうなことが多々あります)。シールをずっと貼ったままだと剥がれなくなる可能性もあります。シールをはがす際は、慎重にはがしてください。はがした場合は、封筒に入れるなどして12桁の英数字が見えない状態で保管してください。
※ 司法書士の水谷先生からコメントをいただきまして、目隠しシールについて以上のように補足・訂正をさせていただきます。水谷先生、ご指摘ありがとうございました。年数の経過によるシールの劣化によるというよりはシール自体の欠陥だと思われますが、非常にはがしづらいのが事実です。 目隠しシールをはがすということ自体には抵抗を覚えますが、はがれなくなっては元も子もないので、以上のような保管の方法で厳重に保管して下さい。早い段階での制度の改正を私も常日頃臨んでおります。
しばらくブログの更新ができずに申し訳ありませんでした。気が付けば11月も終わり12月になりました。あっという間に年を越してしまいそうで恐ろしいです(涙)。